妻を守るために、遺言書を作成する価値を見出した事例

「自宅を妻に残したい」余命を悟った夫からの依頼
上田正幸さん(仮名) 65歳男性 大阪府在住

 

遺言書と遺言執行についての事例をご紹介いたします。
遺言書の作成者は、上田正幸さん(仮名)、妻は美和子さん(仮名)のご夫婦です。
公正証書遺言の作成が無事済んだ後、正幸さんは帰りの公証役場のエレベーターの中で「これで安心や、ホッとしたわ」と言ってニコッと笑いかけてくださいました。
正幸さんには、どうしても遺言書の作成を急ぎたい理由がありました。
正幸さんと美和子さんの間には子供がいません。そのため正幸さんが亡くなった場合、民法の規定だと正幸さんのご兄弟に四分の一の権利がいってしまう事になり、名義がある自宅を奥さんにすべてを相続させられなくなる恐れがありました。
加えて、亡くなった正幸さんのお父さんは、同居していた正幸さんに自宅の土地建物を相続させたのですが、その後、お母さんが正幸さんの印鑑を持ち出し、土地の一部を分筆して、勝手に弟に所有権移転してしまたため、もらった弟のほうが気兼ねして、次第に疎遠となり、関係が悪化していたという事実がありました。
そして、癌を患った正幸さんは自分の先が短いと自覚し、このままではいけないと考え、私どもへご相談されたのです。

すぐに私は、財産は全て妻に相続させるという趣旨の公正証書遺言を作成することをお勧めしました。兄弟姉妹には「遺留分」という相続分の一部を返せ、といえる権利がないので、妻に全て相続させるという遺言がとても有効です。
公正証書遺言を作って一ヶ月もたたない九月七日、正幸さんがお亡くなりになったとの電話が入ってきました。つい先日「ホッとした」と言ってくれた笑顔が思い出されて涙が出そうになりました。後日、ご自宅にお伺いして、仏壇に手を合わせて、妻の美和子さんに、私どもは遺言書で遺言執行者に指定されております。これから遺言の内容を実現させていただきますと告げて、公正証書遺言をお見せしました。
美和子さんは、夫の正幸さんが自分のために遺言書を書いていたことを知り、ボロボロと涙を流しながら読んでいました。

そして、我々は、弟さんにもお会いして話をし法律上、遺留分がないことなどを説明して納得してもらいました。その後は、私どもでお金の払い戻し、不動産の登記名義の変更などの手続きを行い、五月にすべての引渡しが終了いたしました。
相続人の間でのもめごとから、事前に妻を守るために、遺言書を作成する価値を見出した事例です。