成年後見と遺言書、遺言執行を組み合わせた事例

「認知症の妻のため、成年後見と遺言書の2段構えで準備」
小高斉さん(仮名) 80歳 男性

 

成年後見と遺言書、遺言執行を組み合わせた事例をご紹介させていただきます。
小高斉さん(仮名)、昌子さん(仮名)ご夫婦には、子供がいません。昌子さんは、認知症のため施設に入所していました。斉さんは自分が亡き後の妻の行く末が心配でなりません。そこで、私どもへご相談に来られたのです。

まず、昌子さんに成年後見人をつけるため、家庭裁判所へ申立を致しました。身上監護の後見人には斉さんが、契約・財産管理などをする後見人には私どもが選任されました。

※ここは、重要なポイントですが成年後見人は複数選任できます。身内としての愛情でできることはしてあげたい、しかし契約などの法律行為については不安だ、というときなどは複数選任することが被後見人のケアのため有効です。
さらに斉さんには、財産を全て妻の昌子さんへ相続させるという内容の公正証書遺言を作成してもらい、同時に私どもを遺言執行者に指定してもらいました。この趣旨は先ほどの事例と同じで、兄弟姉妹の相続分の廃除です。昌子さんは自分で、主張したり争ったりすることができないので、特に遺言の価値が高まります。

その後、斉さんは亡くなり、私どもは斉さんの妹さんに、斉さんが死亡したことを伝えてお葬式への案内を致しました。するとなんと、その葬式の場で、妹さんから相続分の請求をされたのです。

私どもは、斉さんが遺言書を残してあること、我々が遺言執行者であること、そして財産は全て昌子さんに相続される旨を説明しました。しかし、自分も財産を相続できると思い、あてにしていた妹さんは、なかなか納得されませんでした。妹さんと言えども勝手に斉さんの財産に手を付けると法に触れますと伝えると、その場は、しぶしぶ引き下がりましたが、その後も再三再四、少しだけでも分けて欲しいとの電話が事務所にかかってきました。

昌子さんは、斉さん亡き後、我々が財産管理をしたうえで、グループホームとの入所契約をし、元気に余生を過ごされました。この事例で、斉さんが遺言書を書かなかった、あるいは書いても遺言執行者がいなかったり、成年後見人がついてなかったら、昌子さんはどうなっていたでしょう。

斉さんの妹さんは、昌子さんの判断能力がないことを知っているので、勝手に斉さん名義の銀行預金を全て下ろしてしまうかもしれません。たとえ銀行が通帳を凍結しても昌子さんの印鑑を利用して相続人代表として堂々と出金してしまったかもしれません。昌子さんを守るために、いかに遺言の効力が大きく、遺言執行者の役目が大事かと言うことがわかる事例と言えるでしょう。