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Vol.79 子供に何を残すべきか

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Vol.79 子供に何を残すべきか

アメリカの鉄道王、ヴァンダービルトと、ドイツの銀行王、ロスチャイルドは、共に十九世紀に成功し莫大な資産を残した実業家です。

創業者から数世代を経った現在、その子孫の実業界での存在感には大きな差がついています。

なぜこのような違いが起きたのか?彼らは世界的財閥ですが、そこには一般家庭の家族が学ぶべき重要な教訓があります。

ヴァンダービルトとロスチャイルド

ヴァンダービルトは、一八七七年に他界したとき、現在の価値で一六○○億ドルの財産を残しました。(日本円で一六兆円です!)

彼は、残された一族が子供や孫の世代まで全く心配しなくて良いように、優秀な弁護士を財産の管理人に雇い、完璧な準備をさせ、全て管理人に任せれば良いようにしました。ところが、子孫に残された彼の莫大な財産は、現在ではわずかなものになってしまい、 ヴァンダービルト家は、実業界では影が薄いものになっています。

同時代に銀行業を中心に創業したロスチャイルド家を見てみましょう。

ロスチャイルド商会創設者の初代マイヤー・アムシェルは、ヴァンダービルトのように財産の承継の準備をしっかりと行うだけでなく、家族の中の課題にも取り組みました。彼は五人の子供に資金を貸し付け、それぞれ、ロンドン・パリ・ウィーン・ベニスへと送り込み、銀行業を立ち上げさせ、生み出した利益から創業者資金を返済させました。

子供たちはこの経験を通してビジネスを学ぶことになりました。同時に、各国からの生の情報は、ロスチャイルドのビジネスに大きく貢献しました。その結果、二○○年近く経った今も、ロスチャイルド家は財界に大きな影響力を持ち、存在し続けています。

ファミリーの絆をしっかり育て、それを最大に活かしたロスチャイルド家のアプローチはヴァンダービルト家とは違ったものです。ヴァンダービルトとロスチャイルド、両者とも可能な限りの知恵を投入して財産の承継にあたりました。しかし、数世代の後、その明暗ははっきりと分かれました。

何か明暗を分けたのでしょうか?

ヴァンダービルトは財産の保全だけに心血を注いだ一方で、ロスチャイルドは財産の保全にとどまらず、子供たちに多額の借金をさせ、事業を経験させ、更に厳しく返済させて、人間力や信用力を高める努力を怠らなかったのです。この違いが、数世代の後の子孫に天と地ほどの違いとなって現れました。